*以下、一部鳥種(ローリー類)には該当しない内容がございますのでご注意下さい。
“シード(穀類&種子の餌)だけでは極度の栄養不足です”
シードの栄養素のほとんどはタンパク質と脂質と炭水化物となり、それ以外の数多くの栄養素が極度の欠乏状態にあります。
特に穀類には、ビタミンA、D3、K、B12、ヨウ素などは一切含まれておりません。
カルシウム等のミネラル類も必要量を満たすには程遠く、非常に偏った餌となります。
これでは寿命や健康に大きく悪影響を与えるのは目に見えています。
人間で例えれば毎日ジャンクフードを食べている状態に似ています。
* シードの栄養の一例 *
どれだけシードの栄養が偏っているかこれを見比べただけでもお分かり頂けると思います。
もちろん、ペレットにはその他ビタミン&ミネラルなどの各種栄養素もバランスよく配合されています。
当店ではバランスよく栄養を摂取する為に「ペレット」を与えることを推奨しております。
しかし、インコ・オウムの文化がより進みペレットが普及しているアメリカやオーストラリアに比べ、日本ではまだまだ餌といえば「シード(種餌)」が主体なのが現状です。
「サプリメント」を利用しなければバランスよく栄養を摂取する事は困難です。
① 野生下で食べている「シード」について
インコ類が野生下で摂取しているシードは主に「新芽」や「発芽直前」のシードになります。
これから芽を出して花を咲かせたり実をつける為に栄養をたっぷり蓄えたシードです。
対して、飼料としてのシードは花や実をつけたあとに残ったシードです。
同じシードでも栄養バランスが全く異なるのです。
(*野生下ではシード以外にも様々な食物を摂取しております)
② ビタミンD3の欠乏について
シードで不足する代表的な栄養素1つとして「ビタミンD3(以下、VD3)」があげられます。
VD3は魚類に含まれる成分なのでインコ類は食物から摂取する事は一切出来ません。
鳥類にとってVD3は必須であり、野生下では日光浴によって自己生成します。
従って、室内飼育の鳥類が大変欠乏する栄養の代表格です。
尚、ガラス越しの日光浴ではVD3の生成に必要な紫外線を遮断してしまい効率よく生成できません。
VD3は以下の“カルシウム・ミネラル欠乏について”にも非常に大きく関与します。
②' カルシウム・ミネラルの欠乏について
カルシウムもシードのみでは「必ず」欠乏する栄養の代表格です。
一般的に小鳥類にはカルシウム・ミネラル補給としてボレー粉やカットルボーン(イカの甲)、塩土などの鉱物飼料が用いられてきました。
しかし、それだけではカルシウムを「摂取」はできても、十分な「吸収」はできないのです。
カルシウムを吸収する為には「VD3」と「マグネシウム」が必要となります。
鉱物飼料にはこれらは含まれませんので「カルシウム欠乏」は解消されないのでサプリメントで補給する必要があります。
「カルシウム」「VD3」「マグネシウム」が揃ってはじめて機能するのです。
(*加えてカルシウムの正常機能には通常は不足しないが「リン」も必要です)
尚、ヨウムやハネナガインコ類は他種よりも欠乏に陥りやすくなりますので注意が必要です。
カルシウムの欠乏は以下の“卵詰まりについて”にも非常に大きく関与します。
②'' 卵詰まりについて
セキセイインコやオカメインコによく見られる「卵詰まり」はカルシウム欠乏が主な原因となります。(カルシウム欠乏については上記項目参照)
また、これらの鳥種は繁殖が容易なのでより卵を産みやすくなります。
卵詰りはカルシウムが不足し卵殻の形成不全で柔らかくなり軟卵となり、排出できずに詰まる事がほとんどです。
シードが主食の個体は通常時でもカルシウムが不足しているので、卵を産む際に追い打ちをかけるようにカルシウムが不足し卵詰まりが発生します。
「♀だから仕方ない」と思っている方も多いようですが、原因は「日頃のカルシウム不足」である事がほとんどです。
卵を産む度に「卵詰まり」になっていたら野生下では繁殖し増えられません。
尚、通常時の栄養バランスが取れているペレット食の個体の卵詰まりはほとんど起きません。
③ ビタミンA欠乏について
ビタミンAもVD3同様に穀類には含まれません。
ビタミンA欠乏は主に免疫低下や成長不良を引き起こします。
眼疾患、呼吸器や消化器疾患、内臓疾患、骨疾患などあらゆる疾患に罹りやすくなります。
尚、ヨウムやコンゴウインコ(特に大型)、オオハナインコは他種よりも特筆して欠乏に陥りやすくなりますので注意が必要です。
④ ビタミンB群の欠乏について
ビタミンB群の欠乏は通常は起きにくい障害ですが、症例としてペローシスや脚気、斜頸など脚や首の神経障害などを引き起こします。
主に「アワダマ」で育てられた個体に発生します。アワダマの製造過程で成分破壊されてしまうためです。当店ではアワダマは使用せずフォーミュラーでの挿し餌を推奨しています。
⑤ ビタミンK欠乏について
ビタミンKもシード(種餌)には含まれません。
ビタミンKは止血に重要な栄養素であり、不足は出血時の凝固を阻害します。
但し、通常は腸内細菌が生成するので不足は起きにくい障害です。
腸内細菌の減少や不活性、抗生物質投与中及び後などに起きやすくなります。
⑥ ヨウ素の欠乏について
ヨウ素もビタミンA・D3と並び穀類には一切含まれない栄養素です。
ヨウ素の欠乏は甲状腺腫瘍を誘発します。
更にキャベツなど一部の野菜には甲状腺腫瘍を誘発する成分が含まれており、
知らずに与えている場合も大変多く、甲状腺腫瘍が更に発生しやすくなります。
⑦ 換羽時期(羽換わり)の栄養ついて
換羽の時期は羽を生成するために通常時とは必要な栄養バランスが異なります。
特にシードが主食の個体は通常でも栄養が不足しているので、換羽時期には更に追い打ちをかけるように栄養が不足し栄養が欠乏し体調を崩しやすくなります。
また、羽の根本的な質は生える際の栄養状態に左右される為、換羽時の栄養バランスが非常に大切になります。
⑧ 鳥種特異の栄養の過不足について
全てのインコ&オウムが同じ栄養バランスが適しているわけではありません。
中には過剰摂取に敏感だったり、欠乏に敏感だったりする種類もいます。
特に代表格としてはヨウムなどのアフリカン(アフリカ産インコの総称)とコンゴウインコ(特に大型種)があげられます。
両者とも野生下では椰子油を摂取しており他種よりも脂質(必須脂肪酸)やビタミンA(カロチン)が必要になります。
ビタミンA(カロチン)がより必要な鳥種
…ヨウム、ハネナガインコ類、コンゴウインコ類、オオハナインコ類
カルシウムがより必要な鳥種
…ヨウム、ハネナガインコ類、シトロンインコ類
ビタミンD3がより必要な鳥種
…シトロンインコ類
ビタミンD3の過剰に弱い鳥種
…ルリハインコ類、コンゴウインコ類、ソデジロインコ類
脂質(必須脂肪酸)がより必要な種類
…ヨウム、ハネナガインコ類、コンゴウインコ類
他種よりも脂質を控えた方がよい種類(肥満になりやすい鳥種)
…モモイロインコ、ボウシインコ類